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リサーチレポート
なぜ今、不動産が選ばれるのか
2,000人の消費者データが示す、資産形成行動の変化
なぜ今、不動産が選ばれるのか
資産形成に対する消費者意識は、2022年以降に明確な変化を示している。インヴァランスが毎年実施する継続調査(N≈2,000)において、資産形成の必要性を認識する回答者の割合は高水準を維持し、その「動機」も年を追うごとに具体化・能動化している。
この変化の背景には、コロナ禍や地政学リスク(ウクライナ紛争・中東情勢など)といった社会的変化と、新NISAに代表される政策転換が複合的に作用している。本レポートでは、4年間のデータ推移を軸に、消費者の資産形成行動がどのように変化したか、その中で不動産投資がどのように位置づけられているかを分析する。
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CHAPTER 1:社会変化と資産形成意識の変化
なぜ今、資産形成の必要性が高まったのか
インヴァランスの継続調査において、資産形成の必要性を「感じている」と回答する割合は、調査対象の3セグメントのいずれにおいても高水準を維持している。注目すべきは数値の絶対値ではなく、その背景にある動機の変化だ。2022年時点では「老後への漠然とした不安」を動機として挙げる回答が多数を占めていたが、2025年時点では「インフレ対策」「節税・相続対策」といった具体的・計画的な動機へのシフトが確認されている。
1-1. コロナ禍による収入・雇用の不安定化
2020年から続いたコロナ禍は、雇用と収入の安定に関する前提を変えた。特定業種を中心に収入の急減・途絶が発生し、「就労による安定収入」への依存リスクが顕在化した。同時期、銀行預金金利は事実上ゼロが継続し、貯蓄による資産保全の実効性が低下した。インヴァランスの調査においても、資産形成に興味を持ったきっかけとして「銀行金利が低い」を挙げる回答が一定数を占めている。
1-2. インフレの定着と地政学リスクの常態化
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機に、エネルギー・食料価格が国際的に上昇した。日本においても物価上昇が家計に直接影響し、総務省の消費者物価指数は2022年以降3〜4%台の上昇率で推移した。これは日本が長期にわたり経験してきたデフレ・低インフレ環境とは異なる水準であり、「現金の実質価値が下がる」という現実が消費者に広く認識された。
2023年以降の中東情勢の緊迫化は、地政学リスクの常態化という認識をさらに強めた。インヴァランスの2025年調査では、不動産投資検討層の「やらない理由」として「世界経済の動向や国際的な紛争で大きな影響を受けそう」が12.3%を占めた。この項目は社会変化が資産形成への関心を高める一方で、投資行動を抑制する側面も持つことを示している。ただし検討層が挙げる壁の中心は、後述するように財務・コストへの不安にある。
1-3. 政策転換による「自助」への誘導
2019年の金融庁報告書(老後2,000万円問題)は、公的年金だけでは老後の生活費が不足する可能性を公式に示した。2023年には「資産所得倍増プラン」が政策として打ち出され、2024年からは非課税投資枠を大幅に拡充した新NISAが施行された。また、これに先立つ2022年度からは高校での金融教育が必修化されている。インヴァランスの調査においても、資産形成の必要性を認識している回答者の割合は調査対象3セグメントのいずれにおいても過半数を超えており、この政策的文脈との整合が見られる。
この章で明らかになったこと
2022年以降の資産形成意識の高まりは、コロナ禍による収入不安・インフレによる現金価値の低下・政策による自助促進という3つの外部要因が複合的に作用した結果として捉えられる。特に重要なのは、これらの変化が消費者の動機を「感情的な将来不安」から「計算可能な現実リスクへの対応」へと変容させた点である。インヴァランスの継続調査データは、この動機の変容が2022年から2025年にかけて段階的かつ継続的に進行していることを示している。
【図表①】 社会変化が資産形成意識を定着させ、動機の質を変えた構造
掲載データ:3つの外部環境変化が資産形成の必要性認識を定着させ、動機の質的変化を促した構造(インヴァランス調べ、必要性認識率は2023〜2025年で約67%の高水準を維持、N≈2,000/年)
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CHAPTER 2:なぜ「不動産」なのか——他の投資手段との構造的差異
不動産投資が改めて選ばれる理由は何か
資産形成への関心が高まる中で、消費者の選択肢は多岐にわたる。株式投資、NISA、投資信託、iDeCo、仮想通貨(暗号資産)、金(GOLD)——いずれも認知率は高く、実際に利用されている。その中で不動産投資が改めて注目される理由は、リターンのスペックではなく、他の投資手段では代替しにくい構造的な機能にある。
2-1. 投資手段の認知と利用の実態
インヴァランスの継続調査において、資産形成興味あり層(①)が認知している投資手段の平均回答数は約8〜9個(2022〜2025年)であり、預貯金・生命保険・株式投資・NISAは認知率90%前後と高水準を示す。しかし不動産投資検討層(②)・実施層(③)に絞ると、認知している投資手段の平均回答数は15個前後まで拡大し、ほぼすべての投資手段を認知した上で不動産投資を選択していることが確認される(インヴァランス調べ、2025年)。
不動産投資は「他の選択肢を知らないから選ばれる」のではなく、「他の選択肢を比較した上で選ばれる」投資手段だという事実がデータで示されている。
2-2. インフレ環境における不動産の機能的優位性
インヴァランスの2025年調査において、不動産投資に「前向きになる理由」として最も多く選ばれた項目は「定期的な家賃収入による安定的なキャッシュフローが見込めること」(全体30.0%)であり、これは資産形成興味あり層・不動産投資検討層・実施層のいずれにおいても1位を維持している(インヴァランス調べ、2025年)。2位以下には「景気に左右されにくい収入源であること」(19.7%)、「物価上昇により資産価値や家賃収入の増加が期待できること」(13.6%)が続く。
さらに注目すべきは、2024年調査から登場した「NISAでは物足りない」という動機だ(不動産投資実施層・2024年:20.0%)。NISAを経由して資産形成を始めた層が、次のステップを求める動向がデータ上で確認され始めている。
2-3. 節税・相続という「長期設計」領域での優位性
インヴァランスの2025年調査では、不動産投資を実際に始めた理由(実施層③)として「節税・相続対策」が初めてランクインし、24.7%で3位を記録した。この項目は2022年・2023年・2024年調査には存在せず、2025年に初登場で上位に入った(インヴァランス調べ)。30代後半から40代の消費者が資産承継や税負担を「自分ごとの課題」として具体的に考え始めたことを示している。
2-4. 「比較優位」ではなく「機能の補完」として選ばれる
インヴァランスの調査データは、消費者が不動産投資を「他の投資手段より優れているから選ぶ」のではなく、「他の投資手段では対応できない機能を補完するために選ぶ」という構図を示している。消費者が求めているのは、自分のポートフォリオの中で不動産が果たす固有の役割を明確にすることだ。インフレへの対応、長期の安定収入、節税・相続——これらは他の手段では担えない機能であり、だからこそ選ばれる。
この章で明らかになったこと
不動産投資は、他の投資手段を知らないまま選ばれるのではなく、複数の選択肢を認知・比較した上で選ばれていることがデータで確認される。選ばれる理由の中心は「定期的な家賃収入による安定的なキャッシュフロー」(全体30.0%、インヴァランス調べ2025年)であり、年代・性別を問わず全セグメントに共通する最大の要因(または動機)となっている。さらに2025年には「節税・相続対策」が実施層の始めた理由として初登場し24.7%を記録した。不動産投資は比較優位ではなく、他の手段では代替できない機能の補完として選ばれる投資手段へと位置づけが変化している。
【図表②】 不動産投資に前向きになる理由:全体ランキング
掲載データ:前向きになる理由・上位項目(インヴァランス調べ、2025年、全体N=2,013)
【図表③】 「不動産投資を始めた理由」経年変化:防衛的動機群vs能動的動機群
掲載データ:始めた理由・主要項目の推移(インヴァランス調べ、2023〜2025年、③実施層)
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CHAPTER 3:動機の変化——「不安を逃げる」投資から「未来を設計する」投資へ
不動産投資を始める理由は、4年間でどう変わったか
消費者が不動産投資を始める動機は、固定されたものではない。インヴァランスの継続調査(2022〜2025年)において、実際に不動産投資を実施している層(③)の「始めた理由」を経年で追跡すると、動機の構造が明確に変化していることが確認される。変化の方向は明確なトレンドに集約される——「防衛的動機」の後退と「能動的動機」の台頭だ。
3-1. 防衛的動機群の後退
2022年調査において上位を占めていた「安定資産が欲しかった」「年金の代わり」「生命保険の代わり」という動機群は、2022年から2025年にかけて明確に後退した。「安定資産が欲しかった」は2023年に39.5%でピークを迎えた後、2025年には28.4%まで低下した(インヴァランス調べ)。「年金の代わり」は2022年の29.5%から2025年の17.5%へと、3年間で12pt減少した。
3-2. 能動的動機群の台頭
防衛的動機群が後退する一方で、「預貯金より利回りが高い」「インフレに強い」「リスクヘッジのため」「節税・相続対策」という能動的動機群が台頭している。「預貯金より利回りが高い」は2022年の33.3%から2025年の34.5%へと安定した1位を維持。「節税・相続対策」は2025年に初登場で24.7%(3位)を記録した(インヴァランス調べ)。
3-3. 世代別の動機プロファイル
25-29歳の実施層(男性、N=13)において、「安定資産が欲しかった」は53.8%、「リスクヘッジのため」は46.2%と防衛的動機が全体平均を大きく上回る。一方で「分散投資のため」が30.8%と高く、NISAを経由して不動産投資に踏み込むという複合的な動機構造も確認される。
30-39歳の実施層(男性、N=30)では「節税・相続対策」が30.0%、「インフレに強い」が26.7%、「分散投資のため」が26.7%と、具体的な課題解決型の動機が揃う。自分の資産戦略の一部として不動産投資を位置づけるという能動的プロファイルが最も明確に表れている世代だ(インヴァランス調べ、2025年)。
この章で明らかになったこと
不動産投資を始める動機は、2022年から2025年にかけて「防衛的動機群(安定資産・年金代わり)」が後退し「能動的動機群(利回り・インフレ対策・節税相続)」が台頭するという明確なシフトが確認された。特に「節税・相続対策」は2025年に初登場で実施層の3位(24.7%)を記録した(インヴァランス調べ)。世代別では25-29歳に防衛的動機が残存する一方、30-39歳は能動的・計画的動機が最も明確に表れている。消費者の動機は「不安から逃げる」から「未来を設計する」へと成熟しており、この変化は4年間のデータに連続的に記録されている。
【図表④】 防衛的動機群vs能動的動機群の経年変化
掲載データ:始めた理由・主要項目(インヴァランス調べ、2022〜2025年、③実施層)
【図表⑤】 世代別動機プロファイル比較(2025年・実施層)
掲載データ:始めた理由・主要項目(インヴァランス調べ、2025年、③実施層、25-29歳男性N=13・30-39歳男性N=30 vs 全体N=194)。年代別数値は男性ベースであり、特に25-29歳はサンプル数が小さいため参考値として扱う
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CHAPTER 4:若い世代の意識変化——「怪しい」から「知りたい」へ
若い世代のデータは、業界の常識を覆す
不動産投資に対する一般的なイメージとして、「中高年が行うもの」「怪しいイメージがある」という認識が根強い。しかしインヴァランスの継続調査データは、この認識が現在の消費者実態と大きくずれていることを示している。
4-1. 「良い印象」は若い世代ほど高い
インヴァランスの2025年調査において、資産形成興味あり層(①)が不動産投資に「良い印象」を持つ割合は、全体平均31.8%に対し、女性20代が51.5%、男性20代が47.5%と、20代が全年代で最高値を示した。一方、女性40代は21.5%、男性50代は12.0%と、年齢が上がるほど好意的な印象を持つ割合が低下する傾向が確認される(インヴァランス調べ、2025年)。
4-2. 「怪しいイメージ」は若い世代ほど低い
不動産投資に「悪い印象」を持つ理由として「怪しいイメージがある」を挙げた割合は、全体37.9%に対し、25-29歳では26.5%と全体より11.4pt低い(インヴァランス調べ、2025年)。しかし若い世代には「怪しさ」に代わる別の壁が存在する。「損をしそうなイメージ」を挙げた割合は25-29歳で52.4%と全体(47.5%)を上回り、「メリットがわからない」は34.7%と全体(26.6%)より8pt高い。若い世代の壁は感情的な障壁ではなく知識的な障壁だ。
4-3. 若い世代が「動くきっかけ」——コンテンツが主経路
不動産投資に興味を持ったきっかけを年代別に分析すると、情報接触経路に明確な世代差が確認される。「YouTube」を挙げた割合は男性20代で29.0%、男性30代で23.0%と、全体平均15.2%の約1.5〜2倍に達する。「SNS(TikTok・Instagram・X)」は女性20代で15.5%と全体(7.9%)の約2倍だ(インヴァランス調べ、2025年)。
4-4. 「動くスイッチ」の年代差——知識提供が最大の行動変容要因
不動産投資に悪い印象を持ちながらも検討の余地がある層において、「わかりやすい資料・情報提供があれば検討する」と回答した割合は男性25-29歳で15.8%と、全体(11.1%)を上回る水準にある(インヴァランス調べ、2025年)。一方、女性30-39歳において「アフターサポートが充実した不動産投資会社であること」が前向きになる条件として15.0%と全セグメント最高値を示す。
4-5. 検討層の壁の中心は「財務・コストへの不安」
2025年調査において、不動産投資検討層(②、N=228)の「やらない理由」を見ると、上位を占めるのは「多額のローンを組むのが不安」(25.9%)、「損をするのではと不安になる」(25.4%)、「もう少し貯金が貯まってから」(23.2%)といった財務・コストに関する項目だ(インヴァランス調べ、2025年)。一方、「世界経済の動向や国際的な紛争で大きな影響を受けそう」は12.3%にとどまる。社会変化は資産形成への関心を高める面を持つが、検討層が実際に行動をためらう理由の中心は、外部の社会情勢リスクよりも自身の財務設計への不安にある。
この章で明らかになったこと
不動産投資への「良い印象」は若い世代ほど高く、女性20代51.5%・男性20代47.5%と全年代で最高値を示す(インヴァランス調べ、2025年)。「怪しいイメージ」は25-29歳で全体より11.4pt低く、若い世代の障壁は感情的なものではなく知識的なものだ。興味を持つきっかけはYouTube・SNSが主経路であり、動くスイッチは「わかりやすい情報提供」(男性25-29歳15.8%、全体の約1.4倍)だ。若い世代は業界を拒絶しているのではなく、正確な情報が届けば動く準備ができている層として捉えるべきだ。
【図表⑥】 不動産投資への「良い印象」年代別比較(2025年)
掲載データ:良い印象計・年代別(インヴァランス調べ、2025年、①資産形成興味あり層、N=1,600)
【図表⑦】 「悪い印象の理由」年代別比較
掲載データ:悪い印象の理由・主要項目(インヴァランス調べ、2025年、不動産投資に悪い印象を持つ回答者ベース、全体N=1,173・25-29歳N=147)
【図表⑧】 不動産投資に興味を持ったきっかけ:情報接触経路の年代別比較
掲載データ:興味を持ったきっかけ・主要項目(インヴァランス調べ、2025年、年代別)
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CHAPTER 5:壁の可視化——検討層はなぜ動かないのか
関心と行動の間に何があるか
資産形成への関心が高まり、不動産投資への印象も改善されつつある。しかし関心を持ちながら実際に動いていない消費者が一定数存在することも、データが示す現実だ。インヴァランスの2025年調査において、不動産投資検討層(②、N=228)の「やらない理由(不動産投資を行わない理由)」を分析すると、壁は大きく4つのカテゴリに分類される。
5-1. 壁の4分類と重心
最も高いのはカテゴリD「財務・コストへの不安」で55.7%に達する。次いでカテゴリA「会社・物件への不確実性」が47.4%、カテゴリB「知識・情報の不足」が36.8%、カテゴリC「社会情勢・外部リスクへの不安」が34.2%と続く。検討層の壁の重心は「業界への感情的な拒絶」ではなく、「自身の財務設計への不安」にある(インヴァランス調べ、2025年)。
5-2. 25-39歳の壁——ライフイベントとの重なり
「多額のローンを組むのが不安」を挙げた割合は25-29歳で36.7%、30-39歳で26.7%と、いずれも全体(25.9%)を上回っている(インヴァランス調べ、2025年)。特に25-29歳での水準が最も高く、この世代においてローン返済への具体的な警戒感が強いことが確認される。
25-29歳はライフイベント(結婚・出産・住宅購入)が始まる時期であり、将来の財務負担への先取り的な警戒感が数値に現れていると考えられる。30-39歳は同様のライフイベントが進行中の世代であり、実際の家計状況を踏まえた上での現実的な判断として同項目が挙がっている。
5-3. 壁と「動くスイッチ」の対応関係
カテゴリBの「知識・情報の不足」に対応するスイッチとして、男性25-29歳の15.8%が「わかりやすい資料・情報提供があれば検討する」と回答しており、これは全体(11.1%)を上回る(インヴァランス調べ、2025年)。カテゴリDの「財務・コストへの不安」に対応するスイッチとして、「定期的な家賃収入による安定なキャッシュフロー」が全年代・全セグメント共通で最多(全体30.0%)を占めている。
5-4. 検討層は市場の予備軍として機能している
インヴァランスの継続調査において、検討層(②)は毎年一定数存在し、その構成は入れ替わっている。検討層が挙げる壁の構造が「業界への感情的な拒絶」ではなく「情報と財務の不確実性」に起因しているという事実は、市場の可能性を示す重要なデータだ(インヴァランス調べ、2022〜2025年)。
この章で明らかになったこと
不動産投資検討層(②)の「やらない理由」は4つのカテゴリに分類される。最も高いのは「財務・コストへの不安(55.7%)」であり、次いで「会社・物件への不確実性(47.4%)」「知識・情報の不足(36.8%)」「社会情勢・外部リスクへの不安(34.2%)」と続く(インヴァランス調べ、2025年、N=228)。壁の重心は業界への感情的な拒絶ではなく、自身の財務設計への不安にある。個別項目でも上位は「多額のローンを組むのが不安(25.9%)」「損をするのではと不安になる(25.4%)」「もう少し貯金が貯まってから(23.2%)」と財務系が占める。25-39歳固有の壁はライフプランにおける財務設計の問題として現れており、他の年代とは構造的に異なる。
【図表⑨】 「やらない理由」カテゴリ別構成(検討層)
掲載データ:やらない理由・4カテゴリ別集計(インヴァランス調べ、2025年、②不動産投資検討層、N=228)
【図表⑩】 「やらない理由」年代別比較:25-29歳・30-39歳 vs 全体
掲載データ:やらない理由・主要項目(インヴァランス調べ、2025年、②不動産投資検討層)
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CHAPTER 6:「誰から買うか」——信頼が最後の選定基準になった
会社選定基準に何が起きたか
不動産投資を実際に始めた消費者が「どの会社を選んだか」「なぜその会社を選んだか」という選定基準は、消費者の意思決定構造を理解する上で最も直接的な指標のひとつだ。インヴァランスの継続調査において、この選定基準に2024年から2025年にかけて顕著な変化が確認された。変化の方向は明確なトレンドに集約される——「数値的スペック」から「関係性の質」へのシフトだ。
6-1. 「利回り」の急落と「信頼」「知名度」の急上昇
「信頼」は2023年の30.3%から2025年には39.2%へと約9pt上昇、「知名度」は2023年の16.4%から2025年の33.0%へと約17pt上昇した。一方「利回り(投資パフォーマンス)」は2024年の28.3%から2025年の19.6%へ、わずか1年間で約9pt急落した(インヴァランス調べ)。
選定理由 2023年 2024年 2025年 変化(23→25) 信頼 30.3% 28.9% 39.2% +8.9pt 知名度 16.4% 15.6% 33.0% +16.6pt 購入後サポート 20.5% 21.7% 22.2% +1.7pt 利回り — 28.3% 19.6% ▲8.7pt(24→25) 物件の品質 23.6% 23.9% 29.4% +5.8pt 掲載データ:現在利用の会社を選んだ理由・主要項目の推移(インヴァランス調べ、2023〜2025年、③不動産投資実施層)
6-2. なぜ「利回り」が後退したのか
不動産投資市場において主要プレイヤーが提示する利回りの水準は一定の範囲に収れんしており、数値上の差別化が難しくなっている。消費者が複数の会社を比較した際に利回りの差異が小さいと認識すれば、別の判断軸が前景化する。また、CHAPTER 3で示した動機の変化——長期での資産設計を目的とする消費者にとって、単年の利回り数値よりも「長期で信頼できる相手かどうか」という判断軸の方が意思決定に直結しやすい。
6-3. 「信頼の中身」は世代によって異なる
資産形成興味あり層(①)において、会社選定で重視する点として「信頼」を挙げた割合は男性20代で40.5%と全体(34.1%)を上回り、「知名度」は29.0%と全体(17.8%)を大きく上回っている(インヴァランス調べ、2025年)。この世代では知名度が信頼の代替指標として機能している様子が読み取れる。
一方、女性30-39歳は「信頼(37.0%)」は全体以上だが「知名度(14.0%)」は全体を下回っている。知名度に依存せず、実態と多面的な確認によって判断する傾向が確認される(インヴァランス調べ、2025年)。
6-4. 購入後のサポートへの期待
女性30-39歳において「アフターサポートが充実した不動産投資会社であること」が前向きになる条件として15.0%と全セグメント最高値を示す(インヴァランス調べ、2025年)。消費者が物件そのものではなく、長期にわたって資産を共に管理・運用する相手を選ぶ行為として不動産投資の会社選びを捉えていることがデータから読み取れる。
6-5. 「知名度」急上昇と情報接触環境の変化
インヴァランスの調査において、不動産投資に興味を持ったきっかけとして「インターネット検索」が全年代共通で上位(全体17.6%)に位置している(インヴァランス調べ、2025年)。消費者の情報接触経路の構造変化との連動として、「知名度」急上昇を捉えることが適切だ。
この章で明らかになったこと
不動産投資会社の選定基準は2024年から2025年にかけて「利回り(▲9pt、19.6%)」が急落し、「信頼(+10pt、39.2%)」「知名度(+17pt、33.0%)」が急上昇するという明確な変化を示した(インヴァランス調べ)。数値的スペックから関係性の質へのシフトが、実施層のデータから確認される。ただし「信頼の中身」は世代によって異なり、男性20代は知名度を信頼の代替指標として用いるのに対し、女性30-39歳は実態と多面的な確認によって判断する傾向が確認される。消費者が不動産投資の会社選びを長期的な資産運用の相手を選ぶ行為として捉えていることがデータから読み取れる。
【図表⑪】 会社選定基準の年代別比較
掲載データ:会社選定で重視する点・主要項目(インヴァランス調べ、2025年、①資産形成興味あり層)
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おわりに:データが示す、資産形成行動の新しい構造
4年間のデータが示すもの
本レポートは、2022年から2025年にかけての4年間・累計約8,000人の消費者データをもとに、資産形成行動の変化を追跡した。各章で確認された変化を一本の線でつなぐと、以下の構造が浮かび上がる。
社会変化(コロナ禍・インフレ・地政学リスク・政策転換)が、消費者の資産形成に対する動機の「質」を変えた。漠然とした将来不安を出発点とする防衛的動機が後退し、インフレ対策・節税・相続という具体的な課題設定を出発点とする能動的動機が台頭した。この動機の変容は、4年間のデータに段階的かつ連続的に記録されている。
変化の不可逆性
インフレを体感し、現金の実質価値が下がることを認識した消費者は、インフレ以前の感覚には戻らない。NISAを経由して資産形成を始め、その先のステップを探し始めた消費者は、「投資をしない」という選択肢に戻りにくい。節税・相続という具体的な課題を認識した30代は、その課題が消えない限り資産設計への関心を持ち続けるだろう。インヴァランスの4年間の継続データは、これらの変化が一時的なトレンドではなく、段階的に深化する構造変化であることを示している。
若い世代が示す市場の方向性
本レポートを通じて一貫して確認されたのは、若い世代の意識変化が市場全体の変化の先行指標として機能しているという事実だ。不動産投資への「良い印象」が全年代で最も高いのは20代だ(女性20代51.5%・男性20代47.5%、インヴァランス調べ、2025年)。「不動産投資は中高年が行うもの」という従来の認識と、データが示す現実の間には明確なギャップが存在する。このギャップこそが、今後の市場のポテンシャルを示す重要な示唆となっている。
「誰と長期で資産を育てるか」という問い
CHAPTER 6で確認した選定基準の変化——「利回り」から「信頼」へのシフト——は、消費者が不動産投資の本質をどう捉えているかを示している。消費者は物件を買う行為として不動産投資を捉えているのではなく、30〜40年という時間軸の中で資産を共に管理・運用する相手を選ぶ行為として捉えている。この認識は、2025年のデータにおいて「信頼39.2%・知名度33.0%」という数値として現れた。
展望:変化はさらに深化する
インヴァランスの継続調査は2026年以降も継続される。現時点のデータが示す変化の方向性から、以下の動向が注目される。
節税・相続対策という動機が2025年に初登場で上位に入った。この動機は30代後半から40代への浸透を示しており、今後さらに具体化・多様化することが想定される。20代の好意的な印象と、知識の壁という構造が共存している現状は、情報環境の変化によって急速に解消される可能性を持つ。また「信頼」と「知名度」が急上昇した2025年のデータは、消費者の情報接触環境の変化との連動を示唆しており、デジタル・AI環境における情報接触が深化する中で、選定基準がどのように変化するかは継続的な観察が必要な領域だ。
【図表⑫】 本レポートの全体構造図
掲載データ:社会変化→動機変化→印象変化→選定基準変化の連続的な流れを示す図解(インヴァランス調べ、2022〜2025年、累計N≈8,000)
項目 内容 調査名 不動産投資に関する消費者意識・行動調査 調査主体 株式会社インヴァランス 調査期間 2022年・2023年・2024年・2025年(各年2月実施) 調査方法 ウェブ定量調査 調査対象 ①資産形成興味あり層 ②不動産投資検討層 ③不動産投資実施層 サンプル数 各年N≈2,000、累計N≈8,000 注記 本レポート中の数値はすべてインヴァランス調べによる。数値は小数点以下を四捨五入しているため合計が100%にならない場合がある